山から降りてくる涼しい風に髪をなびかせながら美雪は通いなれた道を進んでいった。
太陽が山肌をオレンジ色に染めながらその姿をゆっくりと沈めていった。
「あれ・・・?」
美雪は夕焼けに染まった空に光が走ったような気がして自転車のブレーキを握った。
「・・・あっ・・・あそこに移った」
「何?」
「あっ・・・こんどはこっちに移った」
美雪が見上げている夕空で白く輝く球体が瞬間移動を繰り返していた。
「あ・・・止まった・・・あれってUFO?」
TVの特番などでUFOの写真を見た事はあるが美雪は初めて目にしたUFOに興奮していた。
「何か・・丸い光・・白い色をしてる・・・」
サドルから降りた美雪は動かなくなったUFOに目を奪われていた。
「他に誰か見てないかな・・・」
美雪は辺りに人がいないか見渡したが、もともと人通りの無い場所なのでやはり誰もいなかった。
「・・・これじゃ誰も信じちゃくれないかな・・・」
クラスの友人に話そうと思っていた美雪は話の信憑性を疑われたとき用に
別の目撃者がいないので、ちょっとがっかりした。
「でも・・・本当だもん・・」
再び美雪は空を見上げた。
「あ・・・あれ・・いない」
さっきまでいた場所に光の球体はなかった。
美雪が目を離したすきにどこかに移動してしまったようであった。
美雪は空の隅々に目をやり探したがすでに影も形も消えうせていた。
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