「あら…今日、先生はいないの…」
毎週のように通ってきた老人達は佳子に尋ね佳子が説明するとすごすごと帰っていった。
「私じゃ…信用できないわね…」
佳子は肩を落として開けた玄関のドアを閉めた。
しかし佳子はこの事を病床にいる祐造に伝える事が出来なかった。
責任感の強い祐造がこの事を耳にして心を痛めるに違い無かった。
見舞いに行く度に生力が弱まっているのが伺い知れる祐造に対し
佳子は普段通りに治療は行われている事を告げるのだった
祐造が入院してから数週間経ち気功院を訪れようとする老人達の姿は消えていた。
来る日も来る日も佳子は一人で誰もいない気功院で過ごしていた。
「御免下さい…」
ある日の事、いつものように気功や人体のツボについての本を読んでいた佳子の耳に
玄関口から響く来訪者の声が届いた。
佳子は期待と不安を抱えながら玄関の曇りガラスに浮かぶ人影を目にした。
「はい…」
ガラス戸を引くとそこには23~4の若い女性が立っていた。
「あの…お願いしたいんですが…」
大人しそうな若い女性は少し緊張した声で佳子に言った。
「あなたが…ですか?」
佳子は予想外の訪れた者が老人でなく若い女性であった事に少し驚いていた。
「はい…」
若い女性は少し恥ずかしそうに応えた。
「では…どうぞ…」
佳子は祐造の存在を知らない彼女に対し祐造が不在である事を告げなかった。
彼女に不安を与えたくないという気持ちの反面、この半年、自分で学んできたものを
試してみたかったのだった。
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