「これ…もらって良いの…ありがとう…」
カメラを意識した可愛い笑顔を浮かべて朋美は言った。
宮崎は自分に対しての扱い方と180度違う朋美の営業顔に
驚きを感じながらカメラをまわしつづけた。
「えーと…入っているものは…」
「シェラフと…雨具と…」
「方位磁石と地図に…」
「これで…終わり?」
「これだけ…?」
朋美は顔色を変えて宮崎に近づき小声で言った。
「ちょっと…着替えとか入ってないの?」
「こんなんじゃ無理よ…」
「………。」
宮崎は無言のまま頭を何度も下げながら朋美に向けカメラレンズを指差した。
「映ってしまいますよ…」
「ちょ…ちょっと…」
宮崎の小声にカメラがまわっているのに気づいた朋美の声は小さくなった。
「……カメラ…止めてよ…」
「ちょ…っと」
「………だめなんです。」
「一度スタートしたら…局からの命令で止められないんです…」
朋美は何度も謝りながらも宮崎が撮影を止めようとしないのに言葉を詰まらせた。
「………。」
「そ…そうなの?」
「じ…じゃぁ…張りきって出発うう」
開き直った朋美は明るい声を出して歩き出した。
宮崎の構えるカメラが路肩をトコトコと歩く朋美の姿を追っていった。
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